お父さんが死ぬ前からだって
あたし 知っていたんだよ?
御通夜の席 能面みたいだった顔は
轟々と燃える音を耳にして
黒々と空へのぼる煙を目にして
はじめて笑顔を浮かべていたね
長い間 寝込んでいたお父さん
2階の端部屋で何を思っていたかなんて
お母さん 知らないでしょう?
あの窓から何を見ていたかなんて
お母さん 知らないでしょう?
「まだ早いのだけど──」
伯母さんは言いにくそうに あたしを見た
「でもね あの子一人ではお前を育てられないだろ?」
どんな風に聞いたのだろう
「あんたのお父さんの友だちだったあの人なら
あんたもよく知ってるし
…まぁ昔は あの子があの人と結婚するって
おばさんは思ってたんだよ
あの子は優しいから
病弱だったあんたのお父さんを
見捨てられなかったんだねぇ」
でも 伯母さん?
あの人たちが何をしたか 知らないでしょう?
窓の下にある庭に不自然に育てられた植物
お父さんが飲んでいたお薬
「ねぇ 49日目に
人間は成仏するのよね?」
「ええ そうよ」
「お父さんもかしらね?」
「当たり前でしょ」
49日が過ぎて成仏できないと
怨みが怒りが哀しみが凝り固まって
人間を鬼にするんだって
……鬼になるのよ
お母さん 知らないでしょう?
死ぬ前のお父さんが気づいてたって
あたし 知っていたんだよ?
だから ほら ねっ?