郵便受けに届いていたのは 差出人不明のハガキ
『 あなたに 教えてあげましょう 』 白い紙面の中央にそっけなく 一行だけ印字されていた
少女は それをゴミ箱へ捨てた
その日から 何通ものハガキが届くようになった
毎日 たった一行だけ
『 ほんの一言 ささやいてごらんなさい 』
『 それだけで なにかが起こります 』
『 あなたの一言が なにかを変えるでしょう 』 そして また
『 あなたは 興味ありませんか? 』 気味が悪いと思うのに
なぜだか 心はザワついて
『 あなたは 言うだけでいいのです 』 次に与えられた誘惑を
少女は捨てることができなかった
休みあけの学校 級友(クラスメイト)に囲まれて
少女は 何気に語る
「…だから ねっ
『 わたしは知っているのよ 』」
話題はクラス内のことのように
思わせぶりにさりげなく
「──!」
蒼白な顔で少女の方を見たのは ななめ前の小柄な少年
少女は かれが小刻みに震えているのに気がついた
(これから どうなるの?)
(これから どうするの?)
ハガキの導くままに 少女は日々ささやきかける
ある日のこと
「
『 □□□□ 』」
すれ違いざまに その短い一言を告げると
かわいそうな 級友(クラスメイト) は 4階の廊下を
狂ったように走りぬけ 窓の外へ消えた
ハガキは もう 届かなかった
数年の月日が流れ 少女はハガキのことを忘れた
──忘れていた
「
『 一枚のハガキから始まった 』そうよ」
窓際にいたグループから 聞こえてきた声
(まさか?)と思い (でも)と不安になって
少女は顔を上げる
「
『 それは毎日 一枚だけ届く 』」
待っていた瞳に出会って
(たぶん わたしは同じ顔をしている)
記憶の中の少年は 蒼白な顔で次の言葉を待っている
「だから……」
彼女は瞳を輝かせ いたずらをしかける子供のように笑った
少女にはわかっていた 彼女が次に何を言うのか
そして 彼女の言葉が響く
「
『 わたしは知っているのよ 』」